【ボーイ・ミーツ・ゲーム:第2回】
THE CHALLENGE / ザ・チャレンジ

 イェーイ! 誰が得するのか分からないこの企画、第2回が始まるぜ!

(この特集についての詳細はこちらの説明ページをご一読ください)

 簡単に言えばBoardGameGeekというボードゲーム情報サイトから知らないゲームを適当に1作選んで、そのゲームを独自調査と幾ばくかの妄想で紐解いていくという企画だ。もちろん、可能な限りは正確な情報を書くつもりだし、もし妄想を書く場合は「これからしばらくは妄想です」とでも断りを入れる事にしよう。できればそんな薄ら寒い事はしたくないものだ。

 前回は総合ランキング7770位のゲームをチョイスした。今回もできるだけいい加減に決めたいので、7770位を2倍して15540位のゲームを引っ張ってくる事にする。ちょっとランキングを156ページ目までめくらないといけないので、しばらくお待ち頂きたい。

 よし、見つけた。あんまり眠くなる作業だったから途中で寝てしまったけれど、夢の中にバッタが出てきて「私だったらURLに直接156と入れてジャンプしますよ。ジャンプと草を齧るのと交尾だけは得意なのでね」と言っていたので、目が覚めてからすぐに目的のゲームを見つける事ができた。

 15540位のゲーム、それは……ジャカジャカ、おっと、これは言わない約束だった。

 「The Challenge」だ。この企画に相応しい、良い名前ではないか。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」の箱絵イラスト

 1990年のゲームである。いかにもファンタジックなイラストの上に、マッドマックスみたいなイカツいロゴが乗っている。向かって左の魔法を使っている人物は、耳が尖っているので恐らくエルフ系の種族だろう。右は角が生えて鬼の形相(比喩ではなく)で剣を振るっているので、魔族の戦士ではないだろうか(まあ、こちらも耳が尖っているんだが)。
 2人のキャラクターはそれぞれカードから抜け出してきたばかりのように描かれ、今にも激しく衝突する寸前という臨場感溢れるパッケージだ。

 写真を掲載していないので分かりにくくて申し訳ないが、イラストも昨今のデジタルツールを用いた物ではなく、生々しいほど手描き感が溢れた水彩タッチの絵だ。当時の漫画風なファンタジーイラストはこのような淡いタッチの物が多かった気がする。

 さあ、それでは箱を開けてみよう(この箱は妄想です)。

 これはカードゲームだ。カードは白背景にカラフルなキャラクターイラストが載った、日本のゲームで言うとモンスターメーカー風の物と、赤と青のそれぞれ単色で刷られた魔法と武器のカードだ。

 カードは、今のカジュアルなボードゲーム市場ではほとんど目にする事がない切り離し式になっている。よくあるミシン目が入っていてプチプチと切り離すやつだ。もし僕が買ったゲームのカードがこのような仕様になっていたら、上手く切り離せるかどうか散々自問自答した挙句、ミシン目の入ったクラッカーを齧って現実逃避するだろう。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」のミシン目付きカード

 そして問題のカードだが、強烈にかっこいい。カラフルなキャラクターカードもいいが、特筆すべきは武器と魔法のカードだ。
 どうやったらこんなにかっこいい物が生まれるんだろう。しばらく思考が停止するほど、かっこいい。渋アー年間グランプリ(え、何それ?)でも大賞候補は疑いない傑作アートワークだ。もしこのゲームの新品を見つけたら、僕はこの高潔な魂を質草にしてでも手に入れるだろう。

 絵、カードのタイトル、カードの説明が、一切の無駄もなく配置されている。数字もただ左肩と右下にポツンと置かれているだけだ。究極にミニマルで、至高である。そう、究極で至高なのだ。このカードでは、その2つがこんなにも美しく共存している。あの親子も、小難しい御託を並べて親子喧嘩をする前に、2人でこのゲームをプレイしたら良かったのだ。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」のカード

 僕の拙い絵ではその魅力が微塵も伝わらないと思うので、是非画像を探して実際に見て欲しい。もちろん、BoardGameGeekにも載っている。

 さて、カードの魅力を伝えるのにスタミナの半分以上を使ってしまったが、ゲーム内容も紹介していきたい。

 とは言え、ルールがスペイン語しか見つからない。その昔スペイン語を勉強しようと文法の本と辞書を買ったのだが、今覚えているのは「セルベサ(ビール)」だけだ。そんな僕にも読めるだろうか。読める訳がない。という事で、機械翻訳で少しずつ英語に直しながら読んでみる事にする。

 まず、さっきも言った気がするが、これはカードゲームだ。箱の裏面には「The Challenge is an innovative card game of deadly combat and formidable magics.」とある。意味は「ザ・チャレンジは決死の戦闘と恐るべき魔法の革新的カードゲーム」という感じだろうか。はっきり「革新的」とあるのに、BoardGameGeekの紹介文には「明らかにメイフェアのエンカウンターズってゲームの紛い物だぞ」と書いてある。誰だこの紹介文を書いたのは。

 ともかく武器と魔法のカードでバチバチやり合って他のプレイヤーをみんなやっつけようというゲームのようだ。箱裏にも「警告:友達とやってはいけない」と書いてあるので、きっと鼻血だけじゃ済まないくらい殴り合うのだろう。その辺の行きずりの人を捕まえて挨拶がわりにプレイするのがいいかもしれない。全くクレイジーなかわい子ちゃんだ。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」の箱裏一部

 まず、手番プレイヤーは他のプレイヤーを1人選んで武器や魔法で攻撃する。攻められたプレイヤーもカードを使って、攻撃を受け流したり、反撃したり、何もせずダメージを受けたりする。それを何度か繰り返し、キャラクターが死ぬと、相手にそのカードを奪われる。大まかな流れはこんな感じだ。なんせスペイン語を英語に機械翻訳した物を、たわいない僕の英語力で解読しているので、分からない所は端折っているし、間違えたりもしているかもしれない。そこはご容赦頂きたい。

 キャラクターは使用できる武器や魔法がそれぞれ異なっており、武器には近距離武器と遠距離武器がある。魔法は遠距離扱いだ。
 ちょっとこの辺りは曖昧だが、恐らくキャラクターは前衛と後衛に分けて配置できるようだ。ダガーなどの近距離武器は前衛対前衛でしか攻撃できないし、弓矢などの遠距離武器は前衛からだと後衛にも攻撃でき、後衛からだと前衛にしか届かない。デジタルなRPGでもよくある戦闘方式だ。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」の隊列模式図

 隊列は、初めに配られた5枚のカードを自由に配置できるようだ。カードは裏向きに配置し、戦闘時に表向ける。攻撃側は攻撃の際に表向け、受ける側は前衛か後衛か指示された列のいずれかを選んで表向ける(攻撃を受けるキャラクターを選ぶ)という事じゃないだろうか。

 武器のカードには、先述した通り近距離武器と遠距離武器がある。攻撃が決まると、キャラクター固有のHP(Hit Point)が減り、ゼロになると倒される。

 魔法のカードには、いくつかの種類がある。まずは、通常の攻撃魔法。距離の制限なく使える。それから、魔法を無効にする魔法や、回復魔法、麻痺の魔法。それからさらに強力な魔法もある。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」の魔法カード

 エンチャントの魔法は、ダイスロールが成功すれば、相手キャラクターを魅了し、仲間に引き込む。魅了されたキャラクターは魔法が解けるまで味方として戦い続けるが、魔法が解けてもその間に受けたダメージはそのまま残る。哀れな肉の盾だ。

 パニックの魔法は、ダイスロールが成功すれば、相手キャラクターを1人戦線離脱させる。離脱したキャラクターはゲームが終わっても戻ってこない。どこに行ってしまったんだろう。武器も持って行ってしまった。いなくなってしまったから、勝利点にも換算されない。つまり、パニックの名前を借りた即死魔法だ。

 ライトニングボルトの魔法は、複数のキャラクターを攻撃できる物だ。それぞれの対象に対してダイスロールを行い、成功したら、死ぬ。初めは5人しか手持ちのキャラクターがいないのに、1回の攻撃で何人も死ぬなんて、怖すぎる。きっとダイスロールの成功率が低めに設定されているんだろう。

 この他にも、キャラクターに関係なく使用できる魔法のアイテムがあったり、盗んだり隠れたりできる特殊なキャクターであるシーフが登場したりする。

 それらの様々なカードを駆使しながら相手プレイヤーのキャラクターをなぎ倒し、いずれかのプレイヤーのキャラクターが全滅したら、ゲームは終了する。自分の生存しているキャラクターと、倒したキャラクターのHPを足した合計値が一番高いプレイヤーが勝利だ。

ボードゲーム「THE CHALLENGE」のキャラクター

 実際にプレイした訳ではないので何とも言えないが、とにかく派手に叩き合って「オラァどうした! もうおねんねか!?」というバイオレントなプレイを楽しむゲームなんじゃないかと思う。こういうダイナミックなゲームは好きだ。機会があったらプレイしたいと思うが、その機会を見つけるのは家電量販店でたまたま高度な人工知能が芽生えた機械を探すくらい困難だろう。

 それでも、このカードの傑出したデザインはどうしても捨てがたい。どうにかして手に入れて、写真に撮って、毎日1枚ずつ入れ替えながらスマホの壁紙にしたいくらいだ。

 この記事を読んだあなた、良かったら自宅の押し入れを一度探してみてはもらえないか。もしこのゲームの未開封品が見つかったら、僕にそれを譲ってはくれないだろうか。
 もちろん、タダでとは言わない。そうだな、どうせいつか売り払ってしまうつもりだった、僕の魂と引き換えにするのはどうだろう?