Waldschattenspiel 森の影

1985 / Walter Kraul

　見つかっちゃった。しーっ、声を出さないで。

　きみはだれ？　ここは暗い暗い森の中。

　静かに、耳を澄ましてごらん。虫たちのひそひそ話と、動物の寝ごと、それから葉っぱの息づかい……。

　でも、よく聞いてごらん。もうひとつ、聞こえてくるだろう、ゆっくりと、こっちに近づいてくる音。あれは、足音だよ。

　この森には、鬼が住んでいるんだ。夜になると、ああやって、ぼくたちを捕まえにくる。

　でも大丈夫。鬼たちの持つ松明の火が見えるかな。あの灯りに照らされなければ、見つかることはないよ。

　しーっ、静かに。こっちにやってきた。見つかる前に、あの木の影に入ろう。

　怖がらなくていいよ。この森のことは、ぼくがちゃんとわかってるから。木から木に、影を伝って、ゆっくり動けば大丈夫。

　ぼくたちの仲間も、この森のどこかにいるんだ。みんな集まれば、もっと心強いよね。それじゃあ、みんなを探そう。

　あ、あそこにいたよ。見えるかな。手を振ってる。

　きみはどうする？

　そっか、もう帰らなきゃいけないんだね。大丈夫。この道をまっすぐ行けば、森の出口だよ。

　それじゃあ、気をつけて帰ってね。明るいところは通らないで。まだその辺りに、鬼たちがいるかもしれないから……。

（あんまり夜が深いから、このページのリンクたちも、行き先が見えなくなっちゃったみたい。帰る時は、ブラウザの戻るボタンが道しるべになるよ）

2021 . 2 . 27