1992 / Reiner Knizia
数学博士でありボードゲームデザイナーでもあるライナー・クニツィア氏による1992年のボードゲーム。
箱絵やボードのデザイン違いでいくつかバージョンが発売されているが、僕が持っているのは1999年のMayfair Games版だ。
「QUO VADIS?」とはラテン語で「どこに行くのか?」という意味。聖書に出てくる言葉で、古今東西、色んな作品に引用されているので一度は聞いたことがあるだろう。
ゲームは、箱にも書いてある通り「古代ローマでの政治と陰謀」という、ボードゲームではよくあるモチーフだけど、その中でも議会の議員たちの選挙をテーマにしている。
箱には一切の甘さがなく、ひたすら渋いデザインで徹底している。
こういうかっこよさなんだよな、僕がボードゲームを好きになったきっかけは。
ただ一点不可解なのは、パッケージにでかでかと鎮座しているタイトルロゴが、解像度がアレなデータを使っていたのかジャギーが出てる……。
公式でオリジナルな出版物なんだし、もうちょっとまともなデータは無かったのかな……。
それはさておき、このゲームの特筆すべき点、それはボードのかっこよさだ。
僕が持っているボードゲームの中でも、5本の指に入る美しいボードがこの箱の中に入っているのだ。
それでは、ご覧あれ。
そうです。古代ローマのモザイク画を模したイラストになっているのです。
配色もシックで高級感があり、細部まで描き込まれたイラストは、もはや「美術」と言って良い完成度。
それが他のバージョンではここまで凝ったイラストになってないようで、この版を手に入れることができた偶然に感謝するしかない。
デザインのこだわりは他のコンポーネントでも抜かり無く、例えばルールブックもこの洗練度だ。
白黒だが非常に美しい紙面だ。
最近のゲームはルールブックもカラフルでイラストもふんだんに挿入されており、非常にフレンドリーなデザインをされているが、昔のゲームはこういう淡白だが美しいルールブックが多かった気がする。
そしてデザインの追究は当然コマにも表れている。
議会であの手この手を使って悪巧みをする議員たちのコマ。
パッと見、なんの形かよくわからないコマだが、これはアカンサスの葉っぱの連なりを表しているらしい。
アカンサスは日本語で言うと葉アザミで、古代から神殿の装飾などに用いられてきたモチーフだ。(下の写真はUnsplashより)
この写真の柱の上の方にウニャウニャしている装飾がアカンサス。
先ほどのゲームのコマも、古代ローマという時代背景を踏まえてこのアカンサスをデフォルメしているようだ。デフォルメされ過ぎていて、ちょっとどの辺が葉っぱなのかわからなくなっているが……。
それでも、ゲームのコマに古代ギリシャ建築のモチーフを採用するという、非常にコンセプチュアルな試みは手放しで賞賛したい。
さて、そろそろゲームの内容も簡単に紹介しておこう。
ゲームは(すごく簡単に言えば)、ボード上のコマを選挙のような得票システムでエリアからエリアに進めていき、最後のエリアがコマで埋まった時点で得点計算。最も得点を稼いだプレイヤーが勝ちだ。
まずはこのようにボード下部からコマを登場させる。
金色の丸いマスが描かれたエリアが、それぞれ議会の委員会を表す。
そして各委員会からコマを次の委員会に進めるためには、その委員会で過半数の賛成票を集める必要がある。
自分の色のコマだけで過半数に達している場合は、当然投票無しで進めることができるが、そうでない場合、他のプレイヤーコマからも賛成票を入れてもらう必要がある。
賛成票を入れたプレイヤーにも少しのご褒美があるので、WinWinの交渉ができる。
しかしそこは「Politics and Intrigue」のゲームだから、みんなニコニコで終わるというわけにはいかない。
プレイヤー間の交渉と、裏切り、陰謀と策略、そういう黒いやり取りが繰り広げられるわけだ。
盤面には各プレイヤーの思惑が最高密度でひしめき合う。
ここが最終目的地である元老員。この5マスが全て埋まった時点でゲーム終了と得点計算がある。
ゲーム終了時に、元老員にコマを進めることができていないプレイヤーは、その時点で脱落となる。
その他の要素としては、委員会から委員会に移動する際、ルート上に置かれているチップを獲得することができる。
チップは得点になる物や、カエサルの庇護を受けることのできる特殊効果チップなど、いくつか種類があるが、どれも勝利のためには手に入れておきたい物だ。
チップは全員に見える形でランダムに置かれるので、「あいつはあのカエサルチップが欲しいだろうから、ここの交渉は強気でいけるだろう」などと策を巡らす材料になる。
ちなみに僕が持っているバージョンは、チップをランダムに引くための黒い袋も入っていた。
とにかく、どぎつい交渉がメインの、最近は余り無くなってしまった怒濤のインタラクションが楽しめるゲームだ。
トランプ対バイデンのアメリカ大統領選も佳境だし、このゲームで普段味わうことの出来ない選挙と政治を体験して、自分の選挙力を試してみてはいかがだろうか?
何度も言うが、このMayfair版は本当に素晴らしく美しい。
ただ見て愛でるためのコレクションアイテムとしても、見かけたら買っておいて損はないと思う。
- タイトル
- QUO VADIS?
- デザイナー
- Reiner Knizia
- アートワーク
- Stephen Graham Walsh
- パブリッシャー
- Mayfair Games
- 発売年代
- 1990年代
- プレイ人数
- 5人まで
- プレイ時間
- 1時間くらい
- 対象年齢
- 小学校高学年から
- メカニクス
- 交渉, 投票