2006 / Martin Wallace

tempusはラテン語で「時間」を意味する。
このボードゲームの読み方は「テンパス」「テンプス」の2パターンが存在するようだが、英語読みでの発音記号は「ə」なのでどちらでも正解だろう。
このサイトではラテン語の発音に近そうな「テンプス」の表記にすることにした。(付属していたアークライトの日本語訳は「テンパス」表記だったが……)
さて、「時間」という名のこのボードゲーム、果たしてどんなゲームなんだろうか?


箱には大きな砂時計の絵と、ピラミッドなど様々な文明のイメージが並ぶ。
デザイナーのマーティン・ワレス氏は、複雑で長時間かかる重厚なボードゲームを多く作っている玄人好みのデザイナーだ。
そのワレス氏が、時の流れ、そして文明の興亡といういかにもヘビーそうなテーマで作ったのがこのゲームだが、複雑な要素を限りなく削ぎ落とし、1〜2時間ほどで終わるシンプルなゲームに仕上げられている。
ラテン語には「Tempus fugit.」という格言があり、意味は「時は逃げる。」で日本語の「光陰矢の如し」に相当するらしいが、このゲームもまさにその格言のように、文明の発展と興亡を短時間に凝縮して体験できるものとなっている。
ただ、あまりにも簡略化してあるため、自分の文明を発展させているというリアルな感触は少なく、割とあっさりしたプレイ感だ。
もちろん、そこを溢れ出る想像力で補って楽しむのが、ボードゲーマーがみな持っている素晴らしき超能力なのであることは言うまでもない。

ルールブックはフルカラー8ページ。質感の良い硬めの紙だ。
ではボードを広げてみよう。

海がある。
右側には何やら図表があるが、大きなスペースを占めているのは海だ。
この海の色がすごくいい。ところどころに、イルカが遊び、古代の民は舟を出している。
そして文明が興るには大陸が必要だ。

これが大陸のもとになる。
7つのヘクス(六角形のマス)で一つの大きな六角形のタイルが形作られている。
それぞれのヘクスには草原、森、山地など5種類の地形が描かれてあり、すべてのタイルが異なる地形の組み合わせになっている。
「このタイルは山地が多いから、どこかの山脈の麓かな」
「これは森が多めで、手付かずの原生林が残っている地域だな」
などとあれこれ妄想を膨らますのも良い。
そしてそのタイルを、プレイヤーが順番に一つずつボードの海に配置していく。さながら天地創造のようだ。
配置する順番もプレイヤーの思惑も毎回異なるため、いつも形の異なる大陸が完成する。

例えばこのように、古代の超大陸パンゲアのような巨大な大陸や……

色とりどりの魚たちが透けて見えるような、南の海に浮かぶ環礁……

それからどこかの湖沼地帯のような湖ばかりの大陸など……
実に多様な形の大陸が出来上がる。
モジュラーボード式(マップがボードの組み合わせで作られる)のゲームはたくさんあるが、ここまで自由度の高い形が出来るゲームは多くないだろう。
さて、ボードの右半分にはまた別の情報が描かれている。

この表は時代の移り変わりを表しており、上から下に時代が進むごとに、プレイヤーが取れる行動の幅が広がっていく。
各プレイヤーの進捗には優劣があり、ボード上に多くの人民や都市を配置しているなどのスコア判定により、他のプレイヤーよりも先んじて時代を進める(文明を進歩させる)ことができる。

ボードの隅には「Idea Card」と呼ばれるカードの置き場もある。この横顔が誰なのか知らないが、昔の英雄や神の壁画だろうか?

ゲーム内容に即して訳すとすれば「ひらめきカード」のような日本語訳になるかと思うが、このカードを獲得して使用することで、自分の文明を有利に発展させることができる。
ゲームは手番順に、用意されたいくつかのアクションを選んで実行していくことで進行する。
アクションには、
・人民の移動(コマを移動)
・子世代の誕生(コマを増やす)
・他文明との闘争(他プレイヤーとの戦闘)
・新たなひらめき(カードの獲得)
・都市の建造(都市タイルの配置)
の5種類があり、文明が発展すればそれぞれのアクションが強化されていく。(強化の方向性はみな同じでバリエーションは無い)
アクションの詳細な説明は省くが、こうしてそれぞれの文明が、時に争い、時に協調しながら大陸の覇権を競い合い、いずれかのプレイヤーが文明発展の最終目的である飛行機の発明を達成した時、ゲームは終了する。

ゲームの勝者は得点によって決まるが、ゲーム中に点を得る手段は無く、全ての得点はゲーム終了時に加点される。
即ち、山地以外で人民コマを配置しているマスの数、建造した都市に描かれた数字の合計、最終目的である飛行機の発明に辿り着くことでの追加得点。
得点手段はたったのこれだけだ。

目的がシンプルだから、ゲーム中の計画も立てやすい。
直接攻撃があることを敬遠する人もいるかもしれないが、僕としてはボードゲームが初めての人も、このくらいインタラクションのあるゲームで、テーブルを囲んでボード上で頭脳を戦わせるアナログゲームの醍醐味を、是非味わって欲しいと思う。
ところでこのゲーム、ルールブックに書いていないコンポーネントがいくつか入っていた。

まず、時代の進行表に配置する各色のキューブだが、ルールには各色1個ずつと書いてあった物が、なぜかちょうど7個ずつ入っていた。
記念にイルカのそばで写真撮影。

そしてこちらの黒い袋。紐部分にストッパーまで付いていてちゃんとした作りだが、用途がわからない。
例えば袋に入れてランダムに引くような物があるかと言うと、タイルとカードくらいしか無いが、カードには置き場所があるし(それにカードを袋に入れて引くなんて冗談誰も言わないよな?)、タイルもルールブックに「ボードの横に裏向きの山を作ってそこから引いてくれ」と書いてある。
保管する際にタイルを入れておくための袋かとも思ったが、タイルを入れると嵩張って箱が閉まらない。

そして極めつけはこちらの「5」の都市タイル2枚。
これはちゃんとルールブックに記載がある。
曰く、「ゲームでは使わないよ。自分でオリジナルルール作る時に使ってもいいよ」とのこと。
クールだね!
- タイトル
- TEMPUS
- デザイナー
- Martin Wallace
- アートワーク
- Ron Magin
- パブリッシャー
- CAFE GAMES
- 発売年代
- 2000年代
- プレイ人数
- 5人まで
- プレイ時間
- 2時間くらい
- 対象年齢
- 中学生以上
- メカニクス
- エリアマジョリティ、モジュラーボード