【ボーイ・ミーツ・ゲーム:第1回】
ROGUE TROOPER / ローグ・トルーパー

(この特集についての詳細はこちらの説明ページをご一読ください)

 「知らないボードゲームに出会おう!」という、よく考えたら余りにも当たり前のコンセプトのこの企画、1つだけ当たり前じゃない事があるとすれば、出会うゲームを無作為に決める所だ。

 企画の主旨と方法は上で参照している記事に書いている通りだが、簡単に言うと、適当に決めた数字を元に、BoardGameGeekというボードゲーム情報サイトのランキングから、その数字に当たる順位のゲームを選んで、どんなゲームか調べてみる、という物である。

 という事で、周りを見回してみると「7770」という数字が目についた。見るべき順位はこれで決定だ。このくらいの順位なら、ボードゲームに詳しければ知っている人も多いかもしれないが、僕が知らなければそれでいい。万が一僕が知っているゲームであれば、その時だけは例外的に数字を選び直す。

 現時点でランキング7770位のゲーム、それは………ジャカジャカジャカジャカ……ジャン!(こんな効果音いらない? 僕もいらないと思うので、次回からはやらない)

 出たぞ。「ROGUE TROOPER」だ。幸い、聞いた事もない。

 画像を一瞥したらミニチュアを使ったゲームのように見えたが、所謂ミニチュアゲーム1)ではなく、ただプレイヤー駒がミニチュアになっているだけのようだ。

1) リアルなミニチュアの駒をたくさん使って戦争などをするゲーム

 思えば、僕はミニチュアゲーム やウォーゲーム2)に全く触れた事がない。無作為に選んでいれば結構な確率でそういうゲームに当たるだろう。その時、ちゃんと紹介して記事にできるのか。しかし、それもまたボーイ・ミーツ・ゲームだ。詳しい人から見たら児戯に等しい記事に見えるかもしれないが、1人のボーイが新しい世界に触れていると思って、どうか寛容に見てもらえれば幸いである。

2) 主に戦争を題材にして、史実に沿いながら陣営に分かれて争うゲーム

 話を戻そう。どうやらこれは「ROGUE TROOPER」という原作コミックをボードゲーム化した物らしい。企画の第1回から聞いた事もない原作付きだなんて、昨日僕が道端に落ちていたガムを拾って食べたのを神様が見ていたんだろうか?

 原作は、イギリスのSF漫画雑誌「2000AD」に1981年に掲載された作品らしい。シリーズ化されており、最近になっても新シリーズが出ているようだ。2006年には海外で家庭用ゲーム機向けにTPS3)ゲームとして発売されており、映画化も進んでいるという話もあるほど知名度のある作品のようだが、恥ずかしながら僕は知らなかった。

3) 三人称視点でキャラクターを動かして銃をバンバン撃ったりするテレビゲーム  

 パッケージには青ざめた皮膚をした兵士風の人物が描かれている。恐らくこれがROGUE TROOPERであろう。「ROGUE」は「ごろつき」「放浪者」で、「TROOPER」は「騎兵」「兵隊」のような意味なので、「ROGUE TROOPER」は「ならず者の兵士」というような意味だろうか。

 調べてみると「ローグ」と呼ばれる遺伝子操作をされた強化戦士とその3人の仲間が、反逆者の将軍を探し回っているようなストーリーらしい。そして3人の仲間は生体チップであり、ローグの銃器とヘルメット、バックパックにそれぞれ宿っている……? ん? どういう事だ? ちょっとすぐには飲み込めない設定だが、ハードなサイバーパンクSFっぽい雰囲気で、もし日本語版があれば読んでみたいと思わせる。

 ゲームも1987年の作品と随分古い物だ。

 40マスくらいのヘクス4)が描かれたメインボードと、体力や武器の残弾数を管理する個人ボード、たくさんのカードとサイコロというコンポーネントだが、どれもカラフルで小慣れたデザインに仕上がっており、余り古さは感じさせない。原作コミックの絵を活かしてあるのも時代を超えた格好良さがある。むしろこのくらいの時代のレトロフューチャーなデザインは今の色々なリバイバルの中で当たり前に通用しそうな魅力がある。

4) ボードゲームなどのマップで使われる六角形のマス目

 ボードは一般的な折りたたみ式ではなく、ジグソーパズル型の組み合わせボードになっている。とは言えモジュラー式の可変マップではなく、組み方は1パターンのみのようだ。当時はジグソーパズル型のボードが多かったんだろうか。

 さて、肝心のゲーム内容に触れていこう。色々なソースから寄せ集めて、憶測で補完しながら噛み砕いた内容なので、もし間違いがあればいつでも訂正するつもりだ。

 プレイヤーはヘクス上で駒を動かしながら、止まったマス目でカードを引き、現れた敵と戦ったり、付いてきた同行者を目的地に送り届けたり、アイテムを手に入れたりする。そして最終的に反逆者を探し出し、討ち倒したプレイヤーが勝利だ。

 ところでこのゲーム、ゲーム開始時の初回ターンでスタートプレイヤーになるのは「ゲームの所有者」とルールで指定されている。「このゲーム俺んだぞ、だから最初は俺だ! 貸せ!」というジャイアンとスネ夫が合体したような乱暴な幕開けは、出だしからプレイヤー間の不信と軋轢を引き出し、無闇に競争心を煽る、実にクールなスタート方法だ。

 マスに止まった際に引くカードには色々な種類がある。それが敵性の存在であれば戦う事になるし、同行者なら付いてくる。アイテムは入手でき、クルー(手掛かり)カードを集めればラスボスが登場する。

 戦闘する場合はダイス値を各種パラメータで補正して勝敗を決める。倒せたらその敵カードは捨てられ、倒せなかったらそのマスに残留する。もし自分のライフがゼロになると、死ぬ。そう、死ぬのだ。

 死んだらどうなるかと言うと、一番近くにいるプレイヤーが屍肉に飢えたハイエナのようにやってきて、死んだプレイヤーのチップとその他のカードなどを奪う。奪われたプレイヤーは奪ったプレイヤーのチームになって、奪った方のプレイヤーがゲームに勝ったら、おこぼれを貰って2位になれる(なんだそりゃ)。

 もし2人以上のチップを奪っているプレイヤーがゲームに勝てば、死んでチップを奪われたプレイヤー達がみんな2位になる。最後までちゃんと生き残って頑張っていたプレイヤーは悲惨だ。

 ちなみに同行者を連れていると、同行者1人につき戦闘時のダイス目がマイナス1される。「畜生! だから付いて来るなって言ったんだ!」

 また、他のプレイヤーがいるマスに入ると、戦うか、同行者を攫う(!)か、あるいはプレイヤー間で各種カードの交換や「TALK」ができる。「TALK」とは何かと言うと、特にゲーム上の意味は無い。雑談だ。過酷な戦場にいるのだから、積もる話もあるだろうし、ちょっとした息抜きは必要なのだ。

 そして面白いのは、クルーカードだ。クルーカードは4種類あり、全てを揃えるとラスボスである反逆者が登場するのだが、4枚のカードが反逆者の恐ろしい形相を分割した絵になっている。プレイする度に薄気味の悪い顔のパズルを完成させないといけないなんて、誰がこんな最高なアイデアを考えたんだろう?

 反逆者は顔パズルに描かれたナンバーがライフカウンターになっており、一番早くこれをゼロにしたプレイヤーがゲームに勝利する。もちろん、死んで亡骸を漁られたプレイヤーには2位の座が用意されている。今から作り笑いの練習をしておいた方がいいだろう。

 非常に大まかな解説だが、なんとなくゲームの全容が掴めたのではないかと思う。何しろ原作を全く知らないので、設定や用語が分からない部分も多々あった。もし原作コミックの邦訳版が出ていたらこれを機会に読んでみたかったが、今の所出版されていないようだ。英語版なら手に入るようなので、ちょっと探してみようかとも思っている。

 いや、それよりもボードゲーム版を買うべきだろう! と思ったあなたには申し訳ないが、古すぎてもはや中古しか出回っていないのだ (80年代のゲームなので当たり前だが) 。ボードゲームは新品で買いたい派の僕にとっては、お手上げというしかない。

 なんにせよ、全く聞いたことのない漫画作品を原作にした、全く聞いたことのないボードゲームを知って、ちょっと本気で欲しくなって探してみたり、原作を買おうかと迷っている、それだけで、今回のボーイ・ミーツ・ゲームの物語は十分ハッピーエンドと言えるのではないだろうか。